2007年4月 2日 (月)

おもしろ印講座 10回目

おもしろ印講座の10回目は、用具用材の3つ目、印泥です。

(3)印泥

聞き慣れない言葉です。朱肉というのが一般的ですが、いわゆる皆さんの知っている朱肉とはちょっと違う感じです。今の朱肉は表面にガーゼのようなものが張ってあります。これによって全体の形が崩れずに少しずつ朱肉がしみ出てきて均一につくように出来ています。
印泥は、中国製品です。今の日本の朱肉とは全く違うように思いますが、
昔の朱肉は印泥に近いかもしれません。
辰砂などの赤い顔料に、もぐさ、ひまし油を混ぜて作ってあります。
中国の西れい(さんずいに令)印社というところのものが有名ですが、
この印泥の製造方法は秘密で、日本で同じ様なものは作られていません。
中国でも数社の製品がありますが、上記の「せいれいいんしゃ」のものが
一番いいようですし、沢山日本に入って来ています。
印泥の種類と量によって値段が違います。
量は、主に、一両(30グラム)と二両(60グラム)という二種。
もっと大きなものもあります。
蓋付きの円盤形磁器の入れ物に入っていて、それを四角の箱で保護しています。
色は、いろいろな色があります。もちろん、朱つまり赤系統のバリエーションが主で10種ほどですが、他に、白、黄、藍、緑、茶、黒 、金、銀があります。
値段は「光明」一両で1000円くらいから。
一つ一つがもっと小さくて、色物の6色セットなんていうのもあります。
一般的に書道でよく使われている色は、美麗、光明という朱赤系の種類です。
書道専門の文房具店で売っています。
陶磁器の蓋を開けると、平な状態に印泥が入っています。
使い始めは、まず付属のヘラでよく混ぜてから、団子のような形にして使用します。
放っておくと油が分離して使えなくなりますから、時々練ってあげなければなりません。
使い終わったら、ちゃんと蓋を閉めておくことも忘れずに。

Photo_123 (左が美麗二両の新品

右は光明の一両。使用中のもの。

クリックすれば拡大します。)

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2007年3月14日 (水)

おもしろ印講座 9回目

おもしろ印講座 9回目です。
ちょっと間隔があいてしまいました。
今回は用具用材の二つ目、印刀です。

Photo_96

(2)印刀
石を刻す為の刀です。鉄製です。刃先の鋼によって善し悪しが決まるでしょう。
一般的に印刀の材料は、鉄と鋼。鋼というのは、硬いものを切ったり加工したりする為の鉄と炭素の合金ということです。一般的に、刃物は刃のところに鋼を使っているわけです。

この材料をを写真のような形の刃に成形します。いわゆる両刃です。
手作りの印刀は、鍛造ということをやって出来上がります。昔から鍛冶屋さんがやって来たことです。この前作らせてもらった時の鋼は、バネ鋼と高速度鋼の二種でした。

さて、印刀は、角のところで刻していきます。
使えば、やはり切れ味が悪くなるので、研がなければなりません。
砥石も必要になります。
羅紋硯の裏で代用したり、その辺の平らな石やコンクリートでもできないことはありません。
僕は天草の海岸で拾った石を使うこともあります。なんと言っても天草砥石と同じですから、ちゃんと研げます。

印刀も書道専門店で購入します。
石の大きさに合わせて、細いものから太いもの、また握りの丸いものと四角のものがあります。
あまり細いものは小さなものしか刻すことができませんから、刃の幅が1センチくらいのものが最初の1本でしょう。これはいろいろな大きさの印に刻せます。
中国製で300円くらいからありますが、刃先がすぐにダメになってしまいますから、長い目で見るともう少し高いものを買った方がいいでしょう。僕の使っているのは、国産品で3000円から5000円くらいのものです。角がなかなか丸くはなりませんので、頻繁に研がなくても大丈夫です。
特に、愛用している、ブログで紹介した手作り、自作の印刀は、とてもよく切れます。
多少硬い鉱物が入っていてもなんのそのです。
しかし、誰もが鍛造が出来るわけがないので、やはり、すこし高いものを買うことになります。

いずれにしても、刃物です。取り扱いには注意が必要です。
箱に入れたり、キャップをかぶせたり、持つ部分に滑り止めの皮を巻いたりして、安全に使えるようにして下さい。

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2007年2月24日 (土)

おもしろ印講座 8回目

お待たせしました。

いよいよ、より具体的に少し詳しく説明していきましょう。

8回目からは用具用材です。

用具用材を購入する時に、少しでも参考になればと思います。

5 用具用材について
  もう少し詳しく考えてみましょう
(1) 印材 
① 石
おもしろ印では、主に石印材を使います。中国の石です。残念ながら日本には印材に適した石はほとんどありません。文房具店や書道専門店で売っている石印材は中国からの輸入品です。実用的には、青田石、寿山石、昌化石などが主なものです。 Photo_96
  高校生の時、まだ日本と中国は国交を断絶していました。それで、石印材は貴重品でした。書道の授業では消しゴムを刻しました。僕は書道部でしたが、作品用の雅印は、先生が石に刻してくれました。しかし、卒業すると削られて、新入部員のためにまた使われました。
その後、書道の出来る大学に進学。大学生になって、日中国交回復。印材がやっと簡単に手に入るようになりました。しかし、刻し方がわかりません。本をたよりに、道具を揃えて、とにかく雅印を刻しました。消しゴムのようにはいきませんでしたが、なんとか自分の印が出来て、作品に押したものです。(しかし、めちゃくちゃな刻でした)
ほどなく夏の特別授業で幸いに中村淳先生の指導を受けることが出来ました。そのときのことは今でも忘れられません。先生の刀の使い方の凄かったこと。それ以来、僕も握刀です。握刀については刻のところでまた詳しく説明します。
さて、石印材の話に戻します。
石印材は、天然のものですから色や模様はそれぞれ違います。
形は大体立方体に切断してあり、印面(刻す面)が正方形のものが主ですが、長方形や円や楕円のものもあります。大きさは、印面が3ミリ角くらいからミリ単位で大きくなって、10センチ角くらいまではあります。大きさの単位は正しくは、分、寸です。しかし、今はセンチで表記しているようです。
主に作品に落款として使う大きさは、1、5センチから4センチくらいでしょう。
石印材を鉱物的にいえば、主成分は石灰岩ということです。それに様々な鉱物が少し含有していて、それによって色や模様や硬さが違ってくるのだそうです。ただ、大理石も石灰岩ですが、大理石よりもずいぶん軟かいものです。
さて、どこで売っているかというと、書道専門店が種類も豊富でお勧めです。安価なものは紙の箱に10個や20個単位で、まとめて入っています。ちょっと高級なものは一つ一つ布を張ったクッション入りの箱に入って保護されています。また、鈕(ちゅう)といって印面とは反対側、つまり手で持つ所に、獅子や亀、怪獣などの彫刻が施されているものもあります。田黄(でんおう)や鶏血(けいけつ)といった高級品は陳列ケースの中に収まっています。「ヘー、こんな石もあるのかー」とため息をつきたくなるような石達です。値段は見てのお楽しみ、初心者には高嶺の花です。目の保養として楽しみましょう。 Photo_97 (左写真は書名品掛図 より)
手近くに専門店がないという所では、100円ショップでもあります。ただし、種類はあまりありません。でも、105円で、とりあえず手に入ります。
いずれにしても、高級品、貴重品は別として、ずいぶんと安い値段になりました。3センチ角でも200〜300円で新青田石なら買えるでしょう。僕のよく使う2センチの印は100円くらいです。巴林石という昌化石の一種はもう少し高いのですが、彫りやすい石です。石の種類によって性格が異なり、やはり彫りやすいもの、欠けやすいもの、ねばっこいもの、ばさばさしているもの、などいろいろです。刻してみなければわかりませんね。そして、自分の好みを見つけて下さい。とりあえず、最初は青田と巴林で試してみてはいかがでしょうか。
石印材選びのこつを、いくつかお教えしましょう。まず、ヒビがないかをチェック。あまり派手な模様のないものを、そして、おいしそうなのを!選ぶことです。
例えるなら、羊羹です。ほどよい硬さと均一な印面に出会えるでしょう。刻しやすいのです。では、いい印材を見つけて下さい。

② その他
・木  木も立派な印材です。よく黒柿がいいといわれています。梅の木もそうです。紫檀、黒檀も使えます。昔からよく印鑑に使われている黄楊もいいでしょう。どれも、残念ながらまだ刻したことがないので、わかりません。
どうも貧乏性なもので、お金を払って買ってまでしようとは、まだ思いません。
木なら、枝です。剪定時に切り落とした椿や桜。どこかで丁度よい大きさの枝を剪定していたら、貰ってくるのです。公園等で拾うこともあります。ただ、切ってすぐの生木は刻しにくいですので、乾燥するまで保存しておかねばなりません。また、刀の切れ具合がポイントです。適した刃物を使わなければなりません。よく切れると気持ちのいいものが出来ます。
・ 陶  土といった方がいいのかもしれません。陶芸用の粘土です。これを適当な大きさ、形にして柔らかいうちに凹凸をつけて乾燥、素焼き、削りだして印面を平らにしてから、本焼き、という手順で陶印を作っています。成形してから素焼きし、この段階で刻すということもできます。
・ 竹  竹の根元に近い部分や、節、あるいは地下茎を切って印材とすることができます。書道専門店なら売っています。普通の印刀では刻しにくいので、片刃のものを使います。
・ 角  水牛の角などがボタンとして売っていますので、刻そうと思えば出来ます。ちょっと硬いです。
・ 消しゴム 最近ブームの消しゴム印です。材料は安価で手に入りやすく、誰にでも手軽にできるいい素材だと思います。それから、凄いのは、曲面にも押せるのでガラスのコップ等にプリントできます。ナンシー関さんの作品が目に浮かびます。
・ その他  要は凸凹が刻すことによってできればいいのですから、芋だって、発砲スチロールだっていいのです。ただ、ずっと安定した状態で存在しているのかということが問題でしょう。他に、何かいいものがあったら、教えて下さい。

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2007年2月14日 (水)

おもしろ印講座 7回目

③日本の印の歴史
さて、日本はどうだったのでしょう。
日本の場合は、中国の文化を朝鮮経由で輸入し、日本ナイズしたといってもいいでしょう。
たとえば、ひらがな、この日本独特のすばらしい字も、元を正せば漢字、つまり中国のものです。しかし、漢字のまま使わずに、ひらがなという日本的に変化させたということが、日本人の凄いところなのでしょう。
 4~5世紀、中国の漢字は、仏教伝来という形で日本にもたらされます。つまり、お経の巻物が坊さんと一緒に入って来たということです。仏教伝来お寺にご参拝(538年)と、中学の時に覚えましたね。
それまで、文字を持たなかった日本人は急に文字を使うようになっていくのです。 聖徳太子は日本、中国、朝鮮の言葉を操っていたと思われます。
中国と朝鮮の文化を学び、手本にしていった時代なのです。
さて、ひらがなの話です。
どの国でも、どの言語でも、聖書にもあるように「はじめに言葉ありき」で、言葉が先です。そして、その言葉にあわせて文字が後から出きます。日本の場合、日本の言葉にいきなり入って来た漢字をそのまま使って当てはめました。
具体的には,
写真(秋萩帖)のように
一音に漢字を一字当てていったのです。

Photo_84

安幾破起乃之多者以呂都久以未余理処
悲東理安留東乃以祢可転仁数流
(あきはぎの したばいろづくいまよりぞ 
ひとりあるひの いねがてにする)

なんと沢山の漢字が並びました。
大変ですね。でも、漢字を日本語に使い始めたのです。文字を持ったのです。
これを万葉仮名と読んでいます。もともと万葉集は全部漢字だけで書かれています。今の国語の教科書からは想像もできませんね。
そして、これでは大変面倒で、書くのにも時間がかかります。
これから改造が行われます。草書体を参考にして、どんどん簡略化していって、究極の形までシンプルで美しいものを生み出しました。
これが、平仮名です。はじめは女手と呼ばれ、女性が作り出し、広めていったのではないかと考えられています。その後、男性も使い始め、藤原時平の時、日本初の勅撰和歌集である古今和歌集がひらがなで書かれることになって、漢字と平仮名の立場が逆転します。(と、この前のNHKその時歴史が動いた、でも言ってましたね。ついでに、その時菅原の道真は太宰府に左遷させられるのです。)

そして、このひらがなを漢字と共に、平安時代から江戸時代まで使用してきました。
もちろん、筆記用具は筆と紙です。美しい紙に書かれて仮名文字と
武士の書いた手紙などが思い浮かぶでしょう。
しかし、文字を読み書きできるのは主に武士や商人です。江戸時代まで、読み書きのできない人が多かったのです。ただ、江戸に限っては特殊なようで、江戸時代後期の江戸町人の識字率は男性70パーセント、女性20パーセント、武士は100パーセント、と考えている学者も多いようで、これは世界的に見て、この時代にしては驚くべき数字なのだそうです。
 さて、明治になって政府は、学校教育にあって、一音につきいくつもの字体があっては、複雑でわずらわしいので、小学校令により、一音一字に仮名の制定を行いました。これが、現在我々が使っている平仮名なのです。識字率を上げるために改革を行います。
ひらがなの制定です。
 江戸時代までは、い、と読める漢字、例えば
以、為、井、意、伊、移、違など、い、と発音する漢字が元になった仮名は皆、い、でした。
それでは憶えにくいので、一つにしなければなりません。
明治政府は、いろは48文字に、一つずつの仮名に決めたのです。
それを、平仮名、と呼び、その時に選ばれなかった仮名を変体仮名と読んで区別しました。なんと、明治33年、すなわち1900年の話です。まだ百年ちょっとしか経っていないのです。

最初の「あきはぎの…」で、平仮名の元になった漢字と変体仮名になった漢字が交じっています。
どれが平仮名の元の漢字か、わかりますか?
安→あ 乃→の 之→し 以→い 久→く  留→る 仁→に
です。残りは変体仮名ということです。

前置きがとても長くなってしまいました。このように、中国から入って来た文化を、我々の祖先は上手に日本的にアレンジして来たわけですが、印においても同じです。

Photo_86 話を印に戻します。
「漢委奴国王」金印が示すように、中国の官印制度つまり権威の象徴として印を授けられたことが、始まりでしょう。その後日本風の印になっていきます。

Photo_87

大和古印は、銅製で、丸みを帯びた細い線の朱文の印です。堅苦しくなくて、暖かみのある、なんだか可愛い印ですね。

その後、世界最古の木版印刷といわれる百万塔陀羅尼を生み、勘合符、花押、朱印、割印、烙印、など日本独特の印文化を生み出しました。

Photo_89

(百万塔陀羅尼経)

そして、現代でも、印鑑証明、印鑑登録など、重要なものには欠かせないものとなっていますね。

これでやっとメソパタミアから始まった長い話も終わりです。
改めて手元の小さな印を見て下さい。
長い歴史が詰まっているのです。おもしろいでしょ。

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2007年1月23日 (火)

おもしろ印講座 5回目 篆刻とその歴史

お待たせしました。おもしろ印講座5回目です。
文よりも写真を探すのに手間取ってしまいました。
(写真はクリックすると大きくなります。)
中国の篆刻の歴史を本当におおざっぱに見ていきます。

②篆刻とその歴史
 「篆書を刻すから篆刻」なのですが、いつから篆刻と呼ぶようになったのかは定かではありません。芸術としての篆刻が盛んに行われるようになったのは、中国、明の時代だそうです。当時の文人は、絵画、書、詩、文章などとともに、篆刻が出来なければならなかったようです。何でも自分で出来ないと文人とはいえなかったのですから大変ですね。

自分で書いて自分で刻す、自書自刻で作品を作り楽しんでいました。ちょうど、字を刻すのにふさわしい柔らかい石が採れるようになったので、篆刻が流行したそうです。そして、鑑賞の対象にまでなっていきました。
 
ではここで、中国の印の歴史を見てみましょう。
中国の印のはじめは、秦より前の春秋戦国時代のものが残っています。銅で出来たもので、官職や姓名を刻して権威を示し、璽といったそうです。後に始皇帝が皇帝の印のみを璽と呼び、臣下のものは印と呼ぶようにしたことから、秦以前のものを古璽といって区別しています。この古璽から中国の印の歴史は始まるようです。

古璽の中には、字だけでなく、動物や文様などもあり、まさに、おもしろ印のルーツはここにあるのです。

璽も難しい字ですねー。「爾」と「玉」の合わさった字ですが、爾は象形文字で「美しく輝く花」の形で、「玉」はややこしくて、この時代「王」の意味だったり、石の「玉」(ぎょく)だったりします。とにかく難しい字です。

璽を漢和辞典で調べると「王土を支配する者のかがやかしい印の意味」とあります。確かに皇帝だけが使うにふさわしい字です。この璽は代々の皇帝が受け継いでいくのですが、璽をめぐって権力争いが絶えなかったのが中国の歴史です。それほど重要なのですね。大体宝石の玉(ぎょく)で出来ていて玉璽なんていいますね。(日本でも天皇の印を天皇御璽といいます。)権力の象徴です。権力そのもの、といってもいいかもしれません。なんだかミステリーの世界に迷い込みそうなので話を元に戻します。

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次に封泥というのがあります。これは、文書や便りを他人に開けられないように、紐で縛りその紐の結び目に泥の塊を張り付けました。泥の封です。その泥に印を押したのです。そんなややこしいことを…、と思うでしょうが、忘れてはならないことが一つあります。

さて、この頃、便りは何に書いたのでしょうか?
この時代まだ紙は発明されてはいません。木簡、竹簡といわれる短冊形の木や竹に墨で書いたのです。だから、しっかり紐で縛って、封泥をして、という具合になるのです。

現在でも、この名残があります。どこかで似たようなものを見たことがありませんか?
ウィスキーの封を切るときにエンブレムの凹凸のある紐付きの、たいがいプラスチックの…。そう、あれです。香水にも付いているかもしれません。

ところで、前に書いた論語の件です。論語は木簡に篆書で書かれていました。そして、その大量の木の短冊を紐で結びつけて、ちょうど簀子のようにしてぐるぐる巻いたものを一巻としたのです。一巻は結構かさ張るものです。論語のような本は運ぶだけで大変だったでしょうね。

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篆書は縦横の線が真っ直ぐで、太さも同じ、間隔も同じ、ということで、とても刻しやすい書体です。もちろん中国の秦代では、皆さんが知っている楷書や行書は、まだ生まれていません。当たり前のことですが、その時代の書を刻したわけです。それは石や粘土に刻しやすい字だったのです。篆書は縦長の字形で幅も長さも同じにそろえて書きます。線の太さも同じ。縦画も横画もまっすぐです。線と線との間隔も均等です。だから、並べて書くのにとても適しています。秦の始皇帝は何でもきれいに並んでいるのが好きなようで、自らの墓を護る兵馬俑の大騎馬軍団もきちんと整列していますね。

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そして、次は漢代です。書道においてはとても重要な時代です。書体は篆書から隷書へと変わり、その隷書が楷書、行書、草書を生み出していきます。やはり、篆書は書くのが面倒ですね。だから、少しでも早く書けるように工夫したのが、隷書です。どうして、奴隷の隷という字を使ったのか。実はこの書体は秦代に既に出来ていて、実務に使われていたのですが、あくまでも始皇帝の時代では小篆が正式な文字で、隷属する字ということだったのです。

印の有名なものとして、「漢委奴国王」つまり金印があります。福岡県の志賀島から発見されましたが、中国から授かった物です。この頃の印は官印と私印で性格が違うようですが、身分、階級によって使う材料(玉、金、銀、銅)や、持ち手の部分の彫刻のデザインまで決まりがあったようです。官印制度といいます。つまり、印自体に権威があって、印そのものを所有することが重要な意味をもっていました。私印にはアクセササリーのような工芸的な要素もあったようです。

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後漢時代になると、いよいよ蔡倫という人が紙を発明します。と教科書に書いてありますが、それ以前の紙も発見されていますから、はっきりとはわかりません。まあ詳しいことは別のところで、ということにして、先に進めます。この紙の発明により、世界は変わるのです。

紙に書かれた文が多くなるに従い、証明として使用が格段に増えます。半印とか割印といったことが行われるようになります。いろいろなところで印が証明として重要な物になってゆくのです。

中国書道史で最も有名な人物の一人に、王羲之という人がいます。東晋時代の人ですが、それまでの不格好な行書、草書を、とても格好のよいスタイルにした人です。王羲之の出現によって書道の世界が変わります。この人の字が手本となって上手い人、つまり能書家が次々と出てきます。日本にも影響を与え、「弘法も筆の誤り」の弘法すなわち空海もそして、江戸時代の良寛さんも手本にしています。そして、現在においても、中国、日本の書道の手本とされているような字を書いた人なのです。

さて、その王羲之の字を愛してやまなかったのは唐の太宗皇帝です。唐は平和な時代が長く続いたので文化も盛んでした。特に太宗自らも書を学びましたし、名作を残しました。歴代皇帝の中では随一の書の達人です。そして、多くの人に書を学ばせようとして、王羲之の字の複製を作らせ手本とさせました。それによって書は隆盛しました。そこまではよいのですが、愛するがあまり、王羲之の書は全部皇帝の所有となり、こともあろうに、自分の崩御に際し副葬させたものですから、本物は一つも残っていません。現存する物はすべて複製です。それでも、唐時代のトップクラスの能書家が複製を作っていますので、王羲之の字を伺い知ることが出来ます。

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その代表作に「蘭亭序」というのがあります。複製ですが、今のようにコピー機でしたわけではないので、筆で敷き写しや篭字をしたりして書かれた肉筆です。本物がないのなら一番本物に近い物を歴代の皇帝は宝物として大切にしてきました。
さて、印の話です。この蘭亭序にはいろいろな種類があって、その中の一つ「神龍半印本蘭亭序」というのは、文字が324字に、印がなんと50数個も押してあるのです。所有者の印、鑑定人の印、紙の継ぎ目の印、割印、半印など。歴代皇帝の宝になってから、皇帝の変わるたびに印が押されました。印だらけです。印が証明という意味を持っていることがよく分かる例です。

そして、書道(中国では書法といいますが)が、芸術作品として、自己表現の手段となるのが明、清時代ということになります。この頃は展覧会を意識しての作品作りが始まります。
その中で、落款に用いる雅印が必要になってきます。そして、印そのものも鑑賞の対象となっていくのです。

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これが、中国の印の概略です。
ところが、世界的に見るともっと古いものがあります。

(写真、上から、封泥、木簡、兵馬俑、金印、蘭亭序、清時代の書の例)

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2007年1月10日 (水)

おもしろ印講座 4回目 篆書について

4 ちょっと勉強しましょう 
 ここで、印のついてちょっと勉強しておきましょう。
同じことをするにしても、知らないでするのと、知ってするのとでは、いろいろな意味で随分と違いがありますから。ちょっと長くなりますが、これでもまとめたつもりです。なにしろ、どのことも本何冊にもなる内容のことばかりです。
 まず、おもしろ印のようでおもしろ印とは違う、篆刻のことから始めます。

(1)篆刻とは? その意味 歴史
① 篆書について 
 篆刻について知るためには、まず、「篆書を刻する」から篆刻というのですから、篆書を知らねばなりません。
 篆書(てんしょ)は書道でいう書体の一つです。書体は五つあって、楷書、行書、草書、隷書、そして、篆書です。この篆書、まず、漢字が難しい。なかなか書けるものではありません。しかし、この字を書くしかなくて、覚えるより仕方がないのですが…。活字で見ると簡単そうですが、ちょっと書いてみて下さい。案外どう書くの?という感じの漢字です。

 この篆書というものを理解していただくためには、まず、中国の書、つまり漢字の成立からの流れを知っていただかなければなりません。
ということで、篆書の歴史についてまず、まとめておきます。

 狭義で言えば、場所は中国、時は今から二千数百年程前の話となります。紀元前221年、秦の始皇帝が中国を平定し、統一国家が誕生しました。そして、文字も統一され、新しい文字を制定しました。これが「小篆」です。李斯(りし)という宰相に作らせたと言われています。

Photo_1

(←小篆「泰山刻石」の拓本・クリックすると大きくなります)

 中国で生まれた漢字の現存する最古のものを甲骨文(こうこつぶん)正しくは亀の甲羅や獣の骨に刻された字なので、亀甲獣骨文字と言います。今から、三千数百年程前、時代は殷です。(もっと昔の文字のようなものも発見されつつあります。夏王朝の存在とその証明が進んでいます。しかし、今のところ、ここでは、甲骨文を最古の文字としておきます。)

 中国の歴史覚えていますか?中学校の時に覚えたでしょ?殷周秦漢…、と。
この殷という国の存在を証明したのが、甲骨文をたどって発見した殷嘘です。それまで竜骨という漢方薬がありましたが、何か文字のようなものが刻されていると、思って、集め、研究し、探しだし、掘り出した人達がいるのです。王懿栄と劉鉄雲という二人の金石学者です。これが、なんと1899年の話。つまり、まだ殷(正しくは商というのが国の名です)は証明されて100年余りにすぎないのです。それまで、殷は伝説の国だったのです。歴史というのは、こんなもので、後から証明されるのです。

Photo_71

(←甲骨文字の拓本)

   

Photo_72

(←金文)

 さて、話を元に戻して、次は周ですが、漢字の歴史と政治的な歴史が必ずしも一致するわけではないので、殷のころからもそうでしたが、漢字を書き付ける物は、亀の甲羅や獣の骨から、金属の器の中へと移行します。鋳型に流し込まれた青銅器に文様とともに漢字が書かれています。これを金文(きんぶん)といいます。まだ象形文字から、少しずつ新しい漢字が作り出されました。指事、会意、形声といった作り方でどんどん漢字は増えていきます。そういうことが分かる資料が金文なのです。

Photo_58

(←石鼓文の拓本)

 次は石に刻したものになります。石鼓文(せっこぶん)というのが有名です。この頃の中国はいろいろな国があって、春秋戦国時代と呼んでいます。孔子や孟子などの生きた時代です。そして秦という国が全国を統一するまで、漢字も国ごとにバラバラに使われて、バラバラに発展していったようです。
ところで孔子の論語は、どんなものに、どんな字で書かれていたのか、想像してみて下さい。
分かりますか。難問ですね。後で答えを出します。

 さて、ついに秦の始皇帝、文字の統一です。李斯によって小篆が作られます。広義では、甲骨文からこの小篆まで、全部ひっくるめて篆書と呼びます。また小篆より前のものを、大篆といって区別したりもします。
一般的なハンコで使われている字が、小篆です。
書道の世界では広義、つまり全部ひっくるめて篆書ということが多いでしょう。

書の歴史として篆書を、本当におおざっぱに見てきました。
言葉がよくわからないものもあると思います。幸いにインターネットの世界では、その言葉を検索すれば、答えは出てきます。もっと知りたい方は、もっと詳しく説明をしているサイトが沢山ありますので、どうぞそちらをご覧下さい。

では、今日はこの辺で。

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2007年1月 3日 (水)

おもしろ印講座 3回目 とにかく作ってみよう

お待たせしました。おもしろ印講座3回目の始まりです。
では、とにかく、今回は実際に作ってみましょう。

簡単なおもしろ印の作り方
(1) 手順
3つの準備は整いましたか?
ここでは、とにかく話を先に進めます。
① 用具用材をそろえる 
まずは、すでにそろっているものを
新聞紙を広げてその上に並べます。

② 印面を平らにする 
 印面(これから刻す所)がどんな状態なのかよく見て下さい。凸凹が激しかったら
目の粗い紙ヤスリ(60〜320番くらい)でまず大ざっぱに平らにし、次に目の細かな耐水ペーパー(500〜1000番くらい)で更にきれいな面に仕上げて下さい。
ほぼまっすぐできれいでしたら、500〜1000番を軽くかけて下さい。買ってきたものには表面に蝋が塗ってあります。きれいに見せる為ですが、印泥がうまくつきませんから、きれいに見えても一度必ずペーパーをかけて下さい。
 なお、印材のなるべく下の方をもって、円を描くように、ペーパーをかけて下さい。
せっかく、まっすぐなのが、かえって丸くなってしまってはいけません。まずは軽—く。
紙ヤスリの使い方も後で詳しく説明します。
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 クリックすると大きくなります。以下の写真も同様 

③ 何を刻すか イメージを持つ
何を刻すかも決まっていることでしょう。前述したようにここが一番大切です。
しっかり、イメージして下さい。
例えば、オタマジャクシでいきますか!
④ 書いてみる 調べる メモを取る     
とにかくイメージを具体化して下さい。鉛筆で描けばいいのです。何か参考になるものがあると楽ですね。文字なら字書を、絵、デザインなら写真、図鑑、図案集などを参考にして、
紙に写すか、まねをして鉛筆で描きます。ここでは、大きく描いてもかまいません。
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⑤ できあがりを予想する  下絵を書く (半紙)
透けて見える紙、半紙かトレーシングペーパーですが、
薄手の半紙が手頃で使いやすいでしょう。
透けて見えて描きやすければ何でもいいです。
油性のペンならば普通のコピー紙でもわかります。
左右対称のものなら逆さまに描く必要がありませんから、どんな紙でもいいです。
それに原寸ではっきりと描きます。
2センチの印材なら、2センチの四角に中にぎりぎりまで大きく描いて下さい。
柔らかいところで、石を紙に押し当てれば、石の形が取れるでしょう。
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ここで考えてほしいのは、出来上がりの予想をすることです。
全体の形はどうか。どこを刻すか、残すのか、
押したときに白くなるのか、色がつくのか。
朱肉のつくところを、赤鉛筆で書くと想像しやすいと思います。

⑥ 下絵を逆さまにして 印材に写す  
印面に逆さまに写す作業です。
油性ペンか鉛筆で描いていきます。
油性ペンがはっきりとよく見えます。
下絵を描いた紙を裏返して見ると、逆さまになって見えます。
見えにくかったら、補正してください。
その逆さまになったものを見ながら写していきます。
12310010
12310013

文字が入っているものは必ず逆さまになりますから注意してください。
左右対称の物はそのままでもいいですし、簡単な形のもので裏返すまでもなく
描けるものもあります。
オタマジャクシなら裏返すこともありませんね。
それから、絵の場合、どっちを向いているかの問題で、どっちでもいいのであれば、
別に逆さまにする必要もないでしょう。
犬の目の回りに片方だけ模様がある場合などは、
ちゃんと左右を確かめなければなりませんが。 

なかなか、うまくできない?
いいんです。多少違っていても。それが味です。そこが面白いのです。
それよりも、今描いた線を刻すのか、それとも残すのか。
そのことを考えながら描いてください。

⑦ ほる
 さあ、クライマックス、後半の山場です。
技術的には、ここが一番難しいところかもしれません。
印刀の出番です。大体、印刀の使い方がわからない、といわれるのでしょう。
刃物は簡単にはいきません。
慣れるということが大切です。はじめから上手くはいきません。
ここでは、手を切らないように、怪我をしないように注意してするのが一番。
利き手で印刀のなるべく刃に近い方を持ち、もう一方の手で印材を握ります。刃のあるところをよく見て、印材の側面などでちょっとキズでもつけてみて下さい。
案外石は柔らかくて、凹ができることが分かると思います。刀を押したり引いたりして
みて下さい。刃が使えている、刀の角度があります。あまり力を入れなくてもきれいに彫れる角度をみつけて、とにかく、凸凹を作ってみて下さい。
詳しい持ち方、構え方、刻し方は、「詳しく考えてみよう」のところで書きます。
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さて、どこを刻しますか?よく考えてください。
線を刻すにしても、残すにしても、線の境界の所をまず刻してください。
思いきって大胆に挑戦してみましょう。なんとかなりますから。
失敗すれば、また、紙ヤスリで削って、やり直せばいいのです。
これが石印材のいいところです。気に入らなければ何度でもやり直せますよ。
では、いざっ!印面の線めがけて。
健闘を祈ります。
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なお、必ず、新聞紙の上で。
くれぐれも、石の粉を空中にまき散らさない様に注意して下さい。

だから、僕は外でするのです。

⑧ 印面をきれいにふき取る  
 なんとか、出来ましたか?最初から完璧、なのはできません。ある程度出来たと思ったら、石の粉をとるために、水洗いします。使い古しの歯ブラシを使うとよりいいでしょう。それから、きれいに水分を拭き取りましょう。
印泥は油性ですから、水分があると着きません。水性のスタンプならば、にじみます。
⑨ 印泥をつけて押してみる
 紙を用意して、いよいよ押印です。
印泥の使い方も後で詳しく説明するとして、とにかく印泥をそっとつけてみましょう。凹んでしまう程、ぎゅーっと押さえつけないように。印の凸部に着けばいいのですから。
後は、いつもハンコを押すときのように、紙の上に押してみましょう。
そして、印を上に持ち上げれば、さあ、まさに、緊張と喜びの瞬間です。この一瞬がたまりません。
きれいに押せましたか?
うまく押せた人は、ここでヤッターと喜ぶわけです。

うまく押せなかった人は、次のことを確認して下さい。
・ 下に平らなノートくらいの厚さのものを敷く ・体重をかけて押す。
・ 印泥が均一に付いているかを確かめる
これで、もう一度チャレンジです。印についた印泥をティッシュなどで拭き取ってから、もう一度つけ直して押してみて下さい。
その次に、今押した印の真横にもう一つ押して、二個並べて押してある状態にします。
手に持った印は、汚れないように注意して、どこかに置いてください。
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⑩ 押したものを見て おかしなところをみつける
 押したものを見て、失敗はありませんか?
一発で完成、ということも稀にはありますが、
大概、ここは失敗したとか、ここは彫り残したとかが、出てきます。
二つ押したうちの一つに、鉛筆で修正を入れていきます。大概は彫り残しがありますから、まず、そこを取るようにします。
そして、太い細い、曲線、長さ、など修正箇所をみつけます。修正の箇所が決まったら、やはりさっきの片方に、鉛筆でその部分を塗りつぶしていくのです。いま塗った所が、また刻すところです。

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⑪ 印面の印泥をふき取る
印泥を紙(ティッシュペーパーのようなもの)で拭き取って下さい。今度は水洗いではありません。印泥は油性ですから拭き取った方がいいです。そのままでは、手が汚れて修正できません。
⑫ 補刀、修正をする
 次に、二つの押したものと印面を見比べながら補刀します。
 削りカスは歯ブラシなどで落として下さい。
・⑨から⑫を納得いくまで繰り返します。
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⑬ 完成 
納得したら、いよいよ完成です。
最初はどこでやめていいのかもわからないかもしれません。
でも、それでいいのです。初めてなんですから。
どうですか?気に入ったものができましたか?
記念の第一作目です。
大切に保存して下さい。

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文章にすれば長いのですが、僕は、一つの印につき、5から30分くらいでやってしまいます。

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2006年12月27日 (水)

おもしろ印講座 2回目

■2 何が必要でしょう?
さあ、準備です
1 心の準備
 何を作るのかを決める。これが一番大切だと思います。
いわゆる、テーマや目標をはっきりと持つということです。
意図を持つ、意志をはっきりすることなのです。

 では、具体的にはどういうこたかといえば、
まず、どんな用途なのか、何に使うものか、を決めて下さい。
 例えば ・蔵書印 ・書票 ・ハンコ ・年賀状 ・カード ・住所印 ・名刺 ・マーク ・雅印
もしかすると、用途なんてないかも知れません。それはそれで結構です。
用途が無いというのも一つの選択肢です。
こんなものを作りたい、という気持ちが大切なのです。

Exlibris 書票だったらこうなります。


 
次は、デザインです。
・ 絵 ・文字 ・マーク ・数字 ・模様など、それらが複合することもあるでしょう。
そして、具体的に 例えば、・イノシシ ・ペンギン ・魚 ・雪の結晶  ・アルファベット 
などと決めて下さい。

こればかりは他人に任せないで、是非、意志を持って自分で決めてほしいのです。
これが、創作の原動力だと僕は思っています。時間を充分にかけて下さい。ここで手を抜いてはなりません。自分で面白いと思ったものを自分で作る。これが重要。これが醍醐味なのです。
そして、その時間こそが楽しいのです。
僕は始終、次は何を…。と思って行動していますから、通勤電車も出張も全く苦にはなりません。
むしろ、一人の充実した時間が過ごせます。思い付いたら、忘れないうちに、すぐにメモをして下さい。これが肝心です。出来たら、言葉よりも絵で、イメージで結構です。
ここまで来たら、しめたもの、もう半分は出来上がっているようなものです。僕の場合、その時点で出来上がり予想図が頭の中に見えてきます。
それでも、出てこない人、の為には、よく参考とか例とかがあります。
一応、実際に例を挙げて写真でお見せするつもりですから、とりあえず、同じものでやってみてもかまいません。

2 ものの準備
 心の準備とともにこちらの準備もしなければなりません。
どっちが先でもかまわないですし、同時にしてもいいですね。
家の中にあるものでも、出来ないことはないと思いますが、
ちょうど良い材料と道具を求めて、まず、街に買い物に出かけましょう。
下の必ずいるもの、ないと不便なもの、を参考にして、買い物リストを作るのを忘れずに。
どこに買いに行くかというと、書道の道具を売っている店です。
この前、100円ショップで印材を見つけましたが、やはり、専門店がお勧めです。
わからないことは、素直に尋ねれば、ちゃんと教えてくれますから。
初めての方は、これから、お世話になるのですからお店を選んでください。
忘れてました。ネットショッピングという手もありますねー。
商品の説明は詳しくしてあると思いますので、事前に調べるとわかりやすいでしょう。

とにかく、最低限必要なものがあれば、すぐに作れます。
興味、関心が大きくなって、もうちょっと、と思えば、
少しずつ他のものを揃えていけばいいのです。
何が必要なのかも、工夫次第です。自分で作っても面白い。それが、おもしろ印流です。
まずは、必ずいるもの、ないと不便なもの、あると便利なもの、を書き出します。

①必ずいるもの
・印材…石 消しゴム 木 小枝 竹 発泡スチロール 粘土 など 何でもかまいませんが、刻しやすさと丈夫で長持ち、ということから、この講座では主に石印材を使います。

・印刀…石には印刀 消しゴムにはカッター 木には彫刻刀(凹凸をつける道具)
ですが、石ですから印刀です。

・印箋…押印する紙 半紙 印箋として市販しているものもある 紙であればいい

・ 印泥…書道では印泥 油絵の具、スタンプ台、朱肉でも可

・ サンドペーパー…印面(刻す面)を平らにするため 


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クリックすると大きくなります
(下に自作印箋、上に右から、印刀、印泥、耐水ペーパー)
つまり、石印材、印刀、印泥、紙、サンドペーパー、これだけあれば、とにかくできますが、
それだけでは、うまくいきません。次のものも準備して下さい。


②ないと不便なもの
 ・筆記用具…鉛筆 油性ペン 筆(墨で書く)筆ペン 赤鉛筆
 ・薄手の紙…半紙 トレーシングペーパーなど透けて見える紙 ビニール
 ・紙ヤスリ(耐水ペーパー)…60番〜320番(荒削り用) 
               500〜1000番(仕上げ用)
 ・新聞紙 数枚


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(下から、新聞紙、薄手の半紙、その上に、筆記用具、薄手の半紙、硯と墨)

③あると便利なもの
 ・バレン…竹皮で自作
 ・鏡 ・歯ブラシ ・カーボン紙 ・黄色のマジックインキ(マジック転写法の場合)
 ・印矩  ・印床 ・印褥 ・硯 ・小筆 ・朱墨 ・字典 
 ・教科書、図鑑など


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(左上に、印床  その下、左から歯ブラシ、朱用硯と朱墨、自作バレン、カーボン紙、字書、図鑑)
(印矩と印褥は、僕は使わないもので、手元にありません。詳しく、のところでわかるようにしておきます)


3 場所の準備
 どこで作業するかです。実はこれが一番難しいのかもしれません。
小さな世界ですから、そんなに広いスペースはいらないのです。木の枝や消しゴムなら削りくずの始末のことを考えて新聞紙の上であれば、どこでもできます。
しかし、印材が石ならば刻した時に石の粉が飛び散ります。これを吸い込んでしまうと当然ながら、体に悪いですね。
だから、いかに粉を空中に飛ばないようにするか、そして、どこで刻すかが問題となってくるのです。皆さんが、専用の工房をもっているといいのですが、普通はないでしょう。
僕は、家でする場合、いろいろ試した結果、外に作業場を設置。といっても机を一つ作っただけですが。後始末が簡単でいつでも始められます。
しかし、雨の日はできません。日没で終わりです。冬は寒いので無理ですね。
普通は、やはり室内で、丁度よい所を見つけるほかありません。ゴミ箱の上とか、洗面所とか、すぐに洗い流せるところが便利です。でも雰囲気が…。という人は、書斎とかになるのでしょう。風通しのいい方がいいのですが、風があってはいけません。粉が飛びます。作業の後で空気が入れ換えられるということです。
それから、小さなものに細かな作業になります。手元を照らす灯りと安定した机がほしいです。そして、新聞紙を広げてその上で作業して下さい。くれぐれも、ふーっと息を吹きかけて粉を飛ばさないように。そんなことは自殺行為です。そこまで感じなくても口の中がざらざらになりますよ。

以上の三点を準備しましょう。
今日はここまでです。準備という段階も、とても楽しいものです。頭の中でいろいろと思い描いてみて下さい。特に心の準備が大切です。新しいことを始めるということは、脳細胞を活性化させます。ものを作るということは脳のいろいろな部分を使います。凄いことだと思いませんか?

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2006年12月25日 (月)

おもしろ印講座 1回目

 1回目 いよいよスタートのおもしろ印講座です。
おもしろ印について、思っていること、考えていることを書いていきます。
さて、どんなものになるのか。自分でもまだ手探りです。
きっと思い違いや勘違いがあることでしょう。
お叱りやら質問、多いにしてください。
では、とりあえず、始めます。

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     1 おもしろ印
(1) おもしろ印とは
 篆刻という言葉をご存じでしょうか?書道の世界では一つの分野でもありますが、石に字を刻して印を作ることを言います。雅印とか印と呼んでハンコとは区別しています。
 ハンコも字を刻しているのですが、あくまでも実用のものです。しかし、篆刻はただ字を刻すのではなく、書を書くように、石に刀で刻していきます。書道として、芸術としての表現方法の一つなのです。
 だから、篆刻は、書の勉強をしなければ、 いいものはできません。ちょっと敷居が高いかもしれませんね。
 ここで、これから紹介する「おもしろ印」はそんなに堅苦しいものではありません。
言葉のとおり「おもしろい」と「印」をあわせて「おもしろ印」ということで、気楽に自分の面白いと思うものを刻してみようというものです。
 まず、字にこだわりません。字でなくていいのです。ですから書のことは、とりあえず気にしないで下さい。もちろん、字を刻したい、とか書を勉強したいというのであれば、それはそれで結構です。
 しかし、そんなことは考えずに、刻したいものなら何でもいいというのが「おもしろ印」です。好きなものを刻していきましょう。
 絵、模様、マーク、アルファベット、何でもいいのです。楽しく気ままに、刻したいものを見つけましょう。
 でも、やはり、滅茶苦茶では出来ません。それなりのノウハウや方法があります。大体は篆刻の方法と同じ様ですが、字ではないというだけでいろいろな制約がはずれますから、自由なのです。
そんな、篆刻のようで篆刻でない「おもしろ印」、一緒にはじめてみませんか。
頭で考えるほど難しいことはありません。とにかく、ちょっとやってみることです。
やってみれば、何とかなるのです。一つ出来たら、楽しいですよ。人生変わるかもしれません。(ちょっと大げさかな)少し豊かになることは間違いありません。

 (2)この講座の全体構成(目次)
この講座を始めるにあたり、まず、全体の流れを見てみましょう。
全部で9章を24回に分けて説明します。

    目次
1.おもしろ印とは?            1回目
2.何が必要でしょうか?さあ、準備です    2回目
 (1)心の準備 何を作ろう?      
 (2)ものと場所の準備         
3.まあ、とにかく一つ作ってみましょう
 簡単な「おもしろ印」の作り方       3回目                   
       ① 印面を平らに ②何を刻すか 
       ③調べる ④下絵 
       ⑤逆さまに ⑥刻す ⑦印面をきれいに 
       ⑧印泥をつける ⑨押す ⑩修正 ⑪完成
4.ちょっと勉強しましょう
 (1)篆刻とは ①篆書について      4回目
         ②篆刻とその歴史      5回目
 (2)印の歴史   6回目 
 (3)日本の印   7回目  
5.用具用材について  もっと詳しく考えてみましょう
 (1)印材         8回目
 (2)印刀         9回目
 (3)印泥         10回目
 (4)その他        11回目
6.もっと詳しい おもしろ印の作り方
 (1)印面を整える          12回目
 (2)何を刻すのかを決める      13回目
 (3)調べる メモを取る(原稿)   14回目
 (4)下絵 出来上がり設計図(印稿) 15回目
 (5)逆さまに写す 字入れ      16回目
 (6)刻す ①印刀の持ち方、構え方
             ②基本線   17回目
             ③陽刻と陰刻 18回目
 (7)押印 ①印面をきれいに拭き取る
           ②印泥をつける
           ③押す      19回目
 (8)修正個所を探す        
 (9)印泥を拭き取り補刀       20回目
 (10)押印、修正、補刀を納得するまで 
 (11)完成 側款          21回目
7.大切なこと             22回目
8.印の周辺 印譜、印袴         23回目
9.応用と発展             24回目         

今のところこういう予定です。
もちろん、予定は未定にして…。
そして、一週間に2回くらいのペースで進んでいこうと思います。
どうぞ、そのつもりでお付き合いください。

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